餅搗きのおふかし
例年良く見ている餅つきの風景です。
家内が去年の二月、一ヶ月の入院をしました。以来退院後も台所に出張り、その日も張り切って取り仕切り、家族は来合わせたお客さんの接待をしていました。
ブザーが鳴り、蒸かしから搗くへ切り替えた途端、ブウーンと音が・・・。これは餅つき器特有の音だろうぐらいに気にもとめずのんびり待機。ところが十分位すると焦げ臭いと薄い煙。
緊急停止――。
即、蓋を開けるやご飯が動いていない。
掘り返す・・。
羽根は回っていない。ご飯はぐんぐん冷めていく。
どうしよう。修理職人の真価が問われる。
ああそうだ、密封パッキン入りのモーターに良く起きるシャフトの固着かも・・・。
それっ!プライヤー!と大声で怒鳴る。
一回、二回、回らない・・・。
うむっ!と三回目にやっと回った。
次は冷めたご飯、羽と一緒に回るだけで搗けない。いくらか水分を加え、へらで押さえつけ・・・ぐるぐると。
何とかものになったのだが冷え切って、のすのにも一苦労。
私と同様、使い古した餅つき器で、今年限りでオシャカかなと思ったのですが、大切に手入れすれば、何のまだまだ。
これは私自身にも言えますね。
そんなことがあって、ふと思い出す。
もうもうとした湯気の中に掛け声よろしく、杵と臼の餅搗き姿。
私は小学校二、三年、兄は十七、八歳。六十余年前のこと。熱いおふかしを握ってもらい、もぐもぐ口を動かしながらかまどの薪でもいじっていたのだろうか・・・。