菊の香り
2006.10.30up
さだまさしさんの”解夏”を読んだ。
髭が古本屋で見つけ、読んだら貸してねと頼んでいたのだ。
分厚い本だが短編集で、もの悲しく、優しい語り口に、病院で全部読み終えてしまった。
最後の短編が”サクラサク”・・・。
老人性痴呆を扱っている。身近にいるので身につまされ、読むのをためらった。
主人公の浮気で家庭が壊れていく・・・。
ある時から、同居している主人公の父親が老人性痴呆になり壊れていく。
時折正気に戻る父親に諭され、家族との絆が修復されていく。
主人公の父親の描写を読んでいるうちに、父の事を思った。
生い立ちも性格も、病気も違っていたけれど、ダンディだったの一言で父と重ねてしまった。
この2〜3年、病気と老いとで、色々な事が出来なくなっていった父に、私は何の気遣いもしてやれなかった。
優しい言葉も掛けてやれなかった。いつも苛々、トゲトゲとしていた。
父が亡くなった直後、髭は後悔すると、お父さんが成仏出来ないよと言ってくれた。
それ以来、後悔するのはよそうと思っていたけれど、悔やまれる事ばかりである。
”墓に布団は掛けられない”のことわざが頭に浮かぶ。
病院からの帰り道、そんな事を思いながら運転していたら、泣きそうになった。
ここで泣いて事故ったら、父がよけい心配するなぁと、涙はこらえたのであるが・・・。
買い物をして、うちの鍵を開け茶の間に入った。
菊の香りがした。
仏さんにあげた菊の香り・・・。
さほど新しい花ではない。その日の朝うちを出た時には香ってはいなかった。
なんだか父の優しさを感じさせる菊の香り・・・。