岩手高齢者大学釜石校二年次・平成四年度 大学祭

「版画・陶芸クラブ」活動発表(テープ起こし)
☆臼沢幸子さん解説  

佐藤 只今より第二年次、版画・陶芸クラブの活動をスライドをもって発表致します。
☆ 一年次は版画で自画像を彫りました。この経験を生かし二年次は「大作に挑戦してみよう」とクラブで目標を立てました。
@ 数回話し合いを重ねた結果、版画の共同制作と決定しました。原画は矢浦さんが描かれたものです。皆さんご存じの「駒木」から展望した釜石製鉄所で、昭和五十四年当時の風景です。
A 原画と初めて会った日、懐かしさと素晴らしさに感動しました。果たして原画通り出来るだろうか、不安の一瞬でもありました。
B しかし、石橋先生から「原画と異なった版画の持つ線の面白さと魅力」の講義があり、不安な気持ちが意欲に変わっていきました。
C 未知の世界への挑戦です。先生からの彫り方、注意点の一言一言を真剣に聞き意見交換をしました。共同制作の始まりです。
D 最初原画を十二枚に分割し、各自の受け持ち分担を決めました。クラブ員が十一名なので一枚は石橋先生に応援して戴きました。
E いよいよ彫り方が始まりました。 空の部分を受け持ったグループを雲軍団と呼びます。
F 雲軍団一番手の佐賀です。今年の猛暑さ中は、版画で汗を流しました。
G 千葉です。簡単に思った空が、彫刻刀の使い方で、晴れたり曇ったりしました。
H 臼沢です。雲の流れが彫れなくて苦労しました。孫悟空が乗る雲になりました。
I 次に、建物の部分を担当したグループを建物軍団と呼びます。
J 佐藤です。棟方志功にどれだけ近付けるか、そんな事を考えながら彫りました。
K 東です。こんな細い線が果たして、と思いながら彫りました。十二人まとまると、意外、壮大な版画が出来ました。
L 矢浦です。私は原画を描いたのですが、完成までに額装もありましたので、不安と希望の連続でした。
M 小笠原です。兎に角難しいものでありました。
N 河原周辺を担当したグループを川軍団と呼びます。
O 梅田です。川面より始め、土手と上に進み、線路で一番苦労致しました。
P 加藤です。今、軍団が、製鉄所の施設が、私達の作った版画として残るって事は、私達としてはいい思い出になるんではないかと思いながらやりました。  
Q 安細です。川面の輝きの様子を彫るのに四苦八苦したこの一念でありました。
R 但木です。私の河原には、矢浦さんが沢山の草を生やしてくれましてね。綺麗に彫るのに大変苦労しました。
☆ 全員がこの様な思いで彫り上げた版木を一人一人試し彫りをします。これは軍団同士の繋がりをチェックする為で、これに合格して初めてパネルに十二枚の版木が並び釘で固定され、一幅の絵になります。
☆ 次に作業分担を決めます。紙を置く係り、墨を入れる係り、バケツで水を運ぶ係りなどありました。
S いよいよ版木全体に墨が塗られます。出来上がりの基礎になるので万遍なく、丁寧にローラーで塗られました。 「こっちが足りないよ」「少し塗り過ぎたかな」共同作業は進められていきます。
21 和紙を版木の上下左右を確認しながら静かに乗せます。
22 その上を「バレン」で均等な力を入れムラにならないように擦ります。
23 いよいよ和紙を剥がす瞬間が来ました。全員が緊張し、一斉に紙に集中します。不安と期待の一瞬です。版木から紙に写された版画に『ヤッター!』の大きな歓声が上がる。

☆ 初めて見た大きな版画、初めて作った大きな版画、全員の思いが込められている。
挑戦して良かった。
(スライドを終わります)  

佐藤 お互いが励まし、支え合いながらの共同作業は多くの共有財産となりました。感動もこの共有の一つです。共有はその理解を兼ねる事を、今回の合作で学びました。この貴重な体験を、卒業後は地域の活動に還元していきたいと思います。
  御指導戴きました、石橋先生に厚くお礼を申し上げます。
全員 有り難うございました。
佐藤 ……関わりました多くの方々に深く感謝を申し上げます。以上で発表を終わりますが、一枚は釜石小学校の子供達に、もう一枚は学校側にそれぞれ寄付を致しました。この作品の現物は局の県民室に掲示してありますので、皆様のご観賞をご案内申し上げて、発表を終わらせていただきます。

       (平成四年十月二日発表)