ボイラー運転
最近のボイラーは良く出来ている。
初期の石炭焚き時代、隔世の感がある。真っ黒になり、汗だくになりながらスコップで石炭を張ったのを思い出す。ガラス越しに今のボイラーを眺めていたら、人間のように思えてきた。
ボイラーの身体に食べ物(水)を与え、重油を胃袋で燃焼させ血液(蒸気)を作り、動脈(配管)で送り出し、手・足に仕事をさせる。暖房用や加熱用の蒸気は静脈(戻り管)から回収する。空気(電気)も必要だ。心臓−ポンプ、目・耳・鼻−各種センサー、断熱材の衣服(お仕着せの制服だが)、頭脳−コンピューター制御、そしてデジタル警報表示で自分の意志を伝えてくる。「水が不足しています」「着火しておりません」「モーターが動いていません」「○○を点検してください」−ハイハイ、分かりました。
人の頭脳が、技術が、どこまで追い上げていくのだろうか。
俺のボイラーロボットがなんか手を挙げて合図しているよ。頭のスイッチを切り替えて、そろそろ白昼夢から覚めようか。
終わり
(『ふだん記通信六号』平成五年六月十日)